野菜の秘めた可能性

江戸っ子の初物好きと折戸茄子

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畑に蒔かれた種が、スクスク育ち野菜になる。 収穫して食べる!美味しい!身体に良い! 当たり前のようですが、凄いことです。 一つ一つの野菜に生産者の思いが詰まっていたり、 語りつ尽くせない歴史と文化が潜んでいたり、 地域を活性化させたりもします。 限られた地域に何代にもわたって、種を採り継承されてきた伝統野菜! その伝統野菜が新しい未来を作り出す。 そんな野菜がもたらす新しい未来にガッツリ関わっていきたいと思います。 皆さんも是非ご一緒しましょう!

 

折戸茄子

 

 

 

 

折戸茄子?実は誰もが知ってる茄子なんです

折戸茄子?

初めて聞いたという方も多いかと思いますが、実は誰もが知っている茄子なんです。

「一富士 二鷹 三茄子(なすび)」

そう、初夢に見ると縁起が良いと言われる順番ですが、この茄子が折戸茄子なんです

由来については諸説ありますが、いずれも徳川家康が関わってきます。

 

徳川家康が好んだもの説、富士山、鷹狩り、初物の茄子

家康は駿河に隠居しますが、その際側室の一人が「なぜ駿河に移られますか 理由が解りません」と尋ねたところ、

「駿河には一に富士山、これは三国(日本、唐土、天竺、今の日中印)中唯一の名山。飽きることがない。二に鷹がよい(鷹狩り)。三に茄子を名産にとし、他所より早々に食べられる。また素晴らしく美味じゃ」と語ったそうです。

 

家康と関わりの深い、駿河の高いものを順番にあげたもの説

一が標高が高い富士山 二が次に高い山の愛鷹山の鷹、三が初物の茄子の値段の高さ。

どうしてそんなに値段が高かったのか?

折戸茄子の栽培地、清水区折戸は温暖で日照時間が長く、砂場で作物の成長が早いことから、

促成栽培(作物の収穫期を早める栽培方法)発祥の地といわれいます。

つまり、茄子がまだどこにもない時期に折戸茄子は収穫できた、茄子の初物だったからなんです。

江戸時代でも3月くらいから出荷していたそうです。

また、普通の茄子に比べて1株あたりの収穫量が非常に少なく、生産量も少なく手間がかかるため、とても高価だったそうです。

1籠1両、1個1両など言われています。(今の値段ですと10万円くらいでしょうか)

今よりずっと小さかった折戸茄子

献上 折戸茄子

籠に入っている折戸茄子が当時献上されていたサイズ、籠に入っていないものが今流通しているサイズです。

当時の物は非常に小さなものだったのです。

備前平戸藩主、松浦静山(松浦清)が記した「甲子夜話(かっしやわ)」によると

「家康が今川の人質時代に初茄子の高値におどろき、一富士・二鷹・三茄子と言ったという。
三保で早作りの茄子があったのである。茄子の献上は、家康が駿河在城中からはじまり、始めは岡・清水であったが時期が間に合わず、三保の折戸にたのみ、今は折戸より代官へ届けて江戸におくる。
また、三保明神の社人から、花落ちで小さい品を献上とも聞く、茄子を入れるカゴは口径二寸三分(7センチ)、深さ九分(2.7センチ)、二分(6ミリ)ほどの竹で荒く編み、櫻の葉を敷いて五個を並べる」

とあります。

時代にずれがありますが、どれだけ大事に扱われていたかは分かります。

将軍に献上する茄子は初物として江戸に届けられたが、これを届けるのは三度飛脚が使われました。

三度飛脚とは町飛脚で江戸、上方間を二の付く日に出発する定期便で、月に三度出るので三度飛脚と呼ばれたそうです。

今も残る、初物の高値

初物の高値は今も残っています。

例えば、正月の初まぐろ!

初まぐろ

過去最高値は1匹 1億5540万です。

夕張メロンのように季節の初物

夕張メロン

こちらの過去最高値は 2玉で320万円です

特に江戸っ子を熱くさせた初鰹

今でも続く、初物の文化ですが、当時「初物75日」「初物を食べると75日寿命がのびる」と江戸っ子達は競って初物を食べました。

特に、江戸っ子を熱くさせた初物が鰹です

カツオの写真

カツオは勝男、「勝つ男」と縁起が良く初鰹を食べると10倍の750日長生きすると言われていたそうです。

そこで、多くの句や川柳が残っています。

●「女房を質に入れても初鰹」

●「まな板に小判1枚初鰹」

●「目に青葉山ほととぎす初鰹」

この初鰹、相模湾で獲れたものを江戸まで運ぶのですが、この船を「押送船(おしおくりふね)」といいますが、この船がすごい、10メートルの小さな船体なのに、3つの帆と漕ぎ手が8人と超高速船でした。

折戸茄子の三度飛脚もそうですが、スピード勝負、誰よりも早くに意味があったのです。

どうして75日長生きできると言われるようになったのか

ここで疑問、そもそもどうして初物を食べると75日長生きできるのか?

確かに、旬の走り一番パワーがある状態の物を食べると体にいいという考えもあったようです。

貝原益軒の「養生訓」巻第三31にも

諸の食べ物、皆あたらしき生気る物をくらふべし。ふるくして臭あしく、色も味もかはりたる物、皆気をふさぎて、とどこほりやすし。くらふべからず

とあります。

でも、なぜ75日?

次の初物まで長生きするように説

諸説ありますが、まず一つ、次の初物を食べるまで長生きしましょうねという説です。

初物は基本的には季節の変わり目に出てきます。季節は春、夏、秋、冬、ありますが、その前にそれぞれ土用の期間が18日、そう計算すると次の初物まで、約75日になります。

あと75日長生きしたらまた、初物食べれるよ。長生きしようねということです。

死刑囚の最後の食べ物説

江戸時代、死刑囚には最後に好きな物を食べさせてもらえたそうです。

そこで、今の時期にない食べ物をお願いすると、それが叶えられなくて、執行が遅れ75日長生きできたという説です。

先にあげた通り、次の季節まで75日ですから、さすがに春先に冬の食べ物を要求しても、それは聞き入れてもらえなかったのかもしれませんね。

栽培が難しい折戸茄子

初物が江戸っ子に人気だったのは分かっていただけたと思いますが、それだけではなく折戸茄子は希少性の高い茄子だったようです。

恵まれた気候で早く収穫できますし、美味しいですが、先にも述べた通り1株あたりの収穫量が少ないのです。

また、とげが鋭いのが特徴で、それは今も変わりません。

折戸茄子 花

今はビニールハウスにて栽培されています。

折戸茄子 ハウス

私が伺った7月後半でハウスの温度はこちら

折戸茄子ハウス温度

この中での作業は大変です。

折戸茄子が他の茄子と違うとっておきなこと

これまで、色々と折戸茄子の説明をしてきましたが、一番お伝えしたい事がこちら

 

折戸茄子は毎年自家採取している

 

ということです。

自家採取とは自ら毎年種を採っているということです。

栽培していく中で、折戸茄子の特性をきれいに出している、折戸茄子らしい折戸茄子を、出荷しないで畑に残して種採りように育てます。

そして、その種から次の年の折戸茄子は栽培され、それをこれからずっと繰り返していきます。

当たり前のようで、とても大切な事です。

え!野菜はみんなそうなんじゃないの?

 

と、思われた方、今の農業は種採りをほとんどしないんです。

種は種屋さんから買うのが普通です。

その種のほとんどがF1種といって、作りやすいように交配させた種です。

F1種が悪いわけではなく、固定種をなくさない、多様性が大事

そう聞くとF1種が悪いみたいな印象を持ってしまうかもしれませんが、それは違います。

F1種がなかったら、こんなに身の回りに野菜が常にある状態は続きません。

F1種が悪いのではなく、種採りをしている野菜(固定種)をなくさないようにしましょう!!

それぞれに、いいところがあります。

それをなくさないよう、多様性を保つのがとっても大事だと、私は思います。

そんなわけで、是非折戸茄子食べてみてくださいね!

 

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畑に蒔かれた種が、スクスク育ち野菜になる。 収穫して食べる!美味しい!身体に良い! 当たり前のようですが、凄いことです。 一つ一つの野菜に生産者の思いが詰まっていたり、 語りつ尽くせない歴史と文化が潜んでいたり、 地域を活性化させたりもします。 限られた地域に何代にもわたって、種を採り継承されてきた伝統野菜! その伝統野菜が新しい未来を作り出す。 そんな野菜がもたらす新しい未来にガッツリ関わっていきたいと思います。 皆さんも是非ご一緒しましょう!

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